千葉麻十佳
1982年札幌市出身 2007年東京藝術大学美術学部を卒業。卒業時に大学が独自に選んで授与するサロン・ド・プランタン賞と平山郁夫賞を受賞する。2009年東京藝術大学大学院彫刻専攻修了。同年ドイツ学術交流会[DAAD]の奨学金を得て、ベルリン芸術大学に交換留学生として入学、卒業はせず翌年に美術作家として活動を開始する。2011年と2012年に前橋アートコンペライブでそれぞれ銅賞と審査員賞を受賞。ベルリンでは主にオルタナティヴスペースでの作品発表と展覧会企画を手がける。近年はアーティストインレジデンスを活用し、各地の火山石や砂、地層を溶かして土地の時間を戻す作品を多く制作している。
主な展覧会に、光が射す(個展・ギャラリーオフグリッド/2019/福島)ウェザーリポート(栃木県立美術館/2018/宇都宮)、1000 Grad(個展・Hohhaus Museum/2017/ラウターバッハ)、The Melting Point; 石がゆれるとき(橘画廊/2016/東京)、第5回中之条ビエンナーレ(2015/群馬)、Ich kann mich nicht erinnern(Historischer Keller/2014/ベルリン)、Das unbewusste Naturgesetz(ベルリン日独会館/2013/ベルリン/共同企画・野村財団助成)、Kellerkinder(Historischer Keller/2013/ベルリン)、Water Tower Art Fest(2012/ソフィア)、blooming in the dark(Historischer Keller/2012/ベルリン/共同企画・朝日新聞文化財団助成)、Licht(個展・2011/札幌)など。
2020年はアーティストインレジデンスで新潟市の「ゆいぽーと」に、2016年はアイスランドのオラフスフィヨルズゥルの「Listhus」に、2015年は札幌の「さっぽろ天神山アートスタジオ」に滞在。2021年は7月に「アーティストインレジデンスあさひかわ」、2022年は2月に「12th極寒芸術祭」に滞在し、作品を制作・発表している。
アーティストステイトメント私の作品は「光とは何か」という問いについての一つの回答である。自然光と人工光の別なく光自体を作品に取り入れ、光を歴史的な事象や今日の社会問題といった文脈と結びつける。光は美術において古典的な主題だが、私の作品に使われる光は絵画の陰影やライトアートのようなものではなく、物理的なエネルギーとしての光である。
光は様々な意味を内包する: 昔は電気がないため光を得るには太陽と火しかなかった。世界各地の土着的な宗教において太陽や火は神とされて畏れ敬われたが、現代社会においてはそれらをもはや神と崇めることはなく、むしろ光は電磁波と解釈され物理的エネルギーとして利用されている。そして、光は兵器でもある。原子爆弾は大量の光とともに多くの人や物を破壊する。兵器ではないものの、原子力発電所の核燃料も光を放つ。光は時代とともに解釈が変わったが、私たち自らの手によって現在もなお恐怖の対象としてあり続ける。
私が光に関した作品を作る理由は、光が幅広い意味を持つからである。光がないと生物は生きられないが、光によってもたらされる死もある。強力な光を放つ兵器によって築き上げられてきたものが瞬時に破壊されてしまう今日において、私たちはどう生き延びて地球を次世代に繋げるか。「光とは何か」は、私たち自身の態度や振る舞いを突きつける問いである。